まほろば紀行~つれづれなるままにレトロに生きる

日々の雑感や昭和レトロ、素人の投資ことはじめを語ります

「シン・百貨店」~進取の気象でよみがえれ~

 

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百貨店のない街ブラなんてありえない(写真=日本橋三越本店新館)

古本屋でたまたま見つけた『銀座のカラス』を久しぶりに読んだ。

20年ほど前に朝日新聞に連載された椎名誠さんの小説だが、昭和40年代の流通業界黎明期に百貨店の業界紙に入った青年が、時に傷つき、つまづきつつも、自分の人生を切り開いていく姿を活写している。

映画『さびしんぼう』の言葉を借りれば、「傷ましくも、輝かしい」青春小説といったところだろうか。

流通戦争の果てに

時代背景はちょうどスーパーマーケットが各地に進出し始めたころだが、当時の百貨店は小売りの王者。各地で勃興してきたスーパーなんか相手にしていなかったはずだ(想像ですが)。

その後の流通業界の激変はみなさんご存じの通り。スーパーが全国に拡大し、ダイエーは一兆円企業になったが、その後の競合激化やバブル崩壊を経て、勢力図は一変した。

逆境の百貨店

快進撃が続いた百貨店も、バブル崩壊後は縮小。デフレによる消費後退が続く中、2000年代に入ると合併・統合が進んだ。

近年はインバウンド(訪日外国人)需要の追い風もあったが、コロナ禍で昨年は売り上げが急減。地方の百貨店の閉店も相次いでいる。

ストアーズ社(『銀座のカラス』は著者の同社前身デパートニューズ社在職時の経験などを基に書かれたらしい)の報道によると、全国百貨店の20年売上高(日本百貨店協会調査、73社196店)は4兆2204億円余りで、既存店ベース(店舗数調整後)の前年比は25.7%減。インバウンド需要の激減とコロナに伴う臨時休業や営業自粛、消費環境の変化による国内市場の低迷が響いたという(全国百貨店20年暦年売上高 コロナ禍の環境変化が直撃、過去最大のマイナス | デパートニューズウェブ - 株式会社 ストアーズ社)。

デジタル対応、サブクスも

コロナ禍がまだ年単位で続く可能性がある中、百貨店はこうした逆境を跳ね返せるのか。

出遅れていたEC(電子商取引)事業の拡大などに活路を見いだそうとしているようだが、今やネットでいつでもどこでもモノが自由に買える時代。高付加価値の商品で差別化するといっても、「良品安価」を求める人が多く、ブランド品だって最新じゃなければアウトレットで安く買える時代だ。

路線でいうと、「脱・百貨店」あるいは「原点回帰」で再生を目指す動きがあるようだ。例えば、大丸松坂屋百貨店は衣料品のサブスクリプションサービスを始めたという。

しかし閉店は続く。2月末には三越恵比寿店、そごう川口店が閉店。また、名鉄はこのほど金沢の百貨店「めいてつ・エムザ」の売却を発表した。

原点回帰で復活を!

そんな中、老舗の三越伊勢丹ホールディングスが4月に社長交代する。EC事業・オンライン接客などに力を入れ始めている同社。VR(仮想現実)を活用したスマホアプリの提供も開始したらしい。

今月のテレビの日経スペシャル「ガイアの夜明け」では、この三越伊勢丹高島屋の試みを取り上げていた。

印象に残ったのは、高島屋の初代が残した「進取の気象」という言葉。従来の習わしにとらわれることなく、常に時代に合った新しいものを提供していく。そこに小売りの原点があるということだったが、ということは結局、「脱」も「原点」も向かう方向は同じではないか。

ところで、高度成長期にウルトラマンが登場して今年は55年(「ウルトラマン」55周年記念サイト)。夏には映画「シン・ウルトラマン」が公開されるという。この混迷の時代に再び救世主の登場だ。

高度成長期以降、百貨店はずっと街のシンボルだったはず。

それがいつの間にか各地で消えようとしている。

進取の気象でよみがえった「シン・百貨店」が各地で生まれたとき、日本経済は本当に復活したといえるのではないか。

全国の百貨店よ、がんばれ!

―つぶやき追伸―

出張時にときどき利用するのが、日本橋三越本店の「菓遊庵」。

ここは全国の銘菓を取りそろえたコーナー。先週ひさしぶりに出張したとき、お土産用に買いました。株主優待カードを使って。

おすすめ!株価がもっとあがれば株は売るかもしれませんけど…。

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明石屋(鹿児島)のかるかん、このしっとり感がたまりません

 

だいじょうぶフレッシャーズ

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人気アイドルによる宣言効果はたしかにある!

娘が今春大学に入学するので、先週末、駆け込みでフレッシャーズフェアに行った。

言わずと知れたスーツ店の全国チェーン、洋服の青山、はるやま、AOKI(各社とも新春からDMの嵐、塾の勧誘もそうだが個人情報だだ漏れ)を候補に、まずクルマで一番行きやすいはるやま(なぜか隣の店は青山)に行った。

開店後すぐに入ったのに、あっという間に駐車場は満車状態。コロナでスーツ店は閑散としてるのかと思いきや、やはりフレッシャーズの需要はすごい。それなりの人出でちょっとびっくりした。

3月もあとわずか。もうほとんどの人は買った後なのだろう。在庫は少なそうだったが、なんとかいいのを見つけてセットで買った(大学入学はほんと物入り。学費だけじゃなく、みなさん備えが必須です。セットはカバンや靴まで付いています)。

最初に入ったはるやまで買ってしまったので青山やAOKIには行かなかったが、チラシやDMを見る限り、たぶんどこも似たり寄ったりの品ぞろえのようだ。

昭和おやじの時代には、フレッシャーズなんて言葉使わなかったように思うが、人生の門出は同じ。新生活に不安もあるだろうが、まず一歩を踏み出そう。だいじょうぶ。悩むのではなく、考えるのだ。そうすれば道は開ける。

大学は昨春、入学式を中止したところがほとんどだろうから、今年はまだあるだけましかな。保護者は入れないが、すべてのフレッシャーズに幸あれと祈りたい。

―つぶやき追伸―

19日に期末配当ナシを発表したAOKIホールディングスの株価が急落。利確か見放し?まあ、そうでしょうが、個人的には来期の反転を期待します。おっさんも快活で!

 

医療費控除と担税力~マスクはだめよ~


医療費が年間10万円を超えるので毎年、確定申告をしている。

医療費控除は、その年の医療費が一定額(普通は10万円)を超えるときに一部を所得控除できるものだが、確定申告しないといけないので面倒ではある。

でも、ドラッグストアで買った医薬品や通院の交通費なども含まれるし、家族に基礎疾患を持っている人がいれば軽く支出が10万円を超えるだろうから、やらないと損だ。


今年も確定申告の期間が来たので、そろそろ整理して申告しようかと思っていたところ、たまたま医療費控除関連の政府答弁書(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b204048.pdf/$File/b204048.pdf)が出ているのを知った。

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全ては霞が関が支配する

答弁書というのは、国会開会中、国会議員から文書で出された質問に対し、内閣が答弁するもの。閣議決定された後、提出されるものらしいので、政府としての見解ということになるのだろう。

●「担税力の減殺」をしんしゃく?

質問は、マスク着用等の新型コロナウイルス感染症対策を国民に呼び掛けている以上、これら「予防」対策にかかる費用も医療費控除の対象にしてはどうかなどを政府に問うたものだ。

答弁書は「医療費控除の対象とならない」とした。

その説明が上から目線のお役所文書で笑えなかった。

医療費控除は「本来は生計費の一部である医療費について、一般的な家計負担の水準を上回って偶発的に支出を余儀なくされる場合の担税力の減殺をしんしゃくする制度として設けられた」のだという。

「担税力の減殺をしんしゃく」なんて言葉。いかにも官僚が考えそうだ。年々重税感を感じるサラリーマンから見ると、実際以上に個々の担税力を勝手に過大評価し、負担を増やされているようにしか思えないのだが。

●マスクは、偶発的に支出を余儀なくされるものではない?

予防にかかる費用については、「自己の判断によりその支出の多寡を決定することが可能であり、一般的な家計負担の水準を上回って偶発的に支出を余儀なくされる性質のものではない」から、控除の対象にならないのだという。

コロナ禍でたいていの家では、マスクやら消毒液やら、いろいろ買いこんでいるはず。それを、本当に偶発的に支出を余儀なくされるものではないと言えるのだろうか。

さらに笑えないのがその後で、政府はいろいろと「医療費の適正化に取り組んでいるところ」だということをわざわざ書き添えている。

政府は増える一方の医療費をなんとか減らそうと努力しているのだから、下々はマスクなどの予防にかかった費用ぐらい払いなさいよと言いたいらしい。

しかし、医療費適正化の例として書かれている特定健康診査や特定保健指導自体、そもそもどれだけのエビデンスがあるのか、国民に教えてほしいぐらいだ。

とはいえ、お上からのお達しだ。聞かずばなるまい(たぶんこんな答弁書誰も見てないだろうが)。

ちなみに私は、これまではずっと妻が税務署に行ってやっていたのだが、ふるさと納税もしっかりやるようになったので、今年は自ら電子申告(e-Tax)してみた。

もちろんお上のお達し通りに申告している。

たぶん。

臆病者の幸福論

女子高に通っていた娘の卒業式に出席した。

コロナ禍の中、保護者の出席は1人限定。校歌斉唱もなく、流れてくる国歌や校歌をみんな黙って静聴する中、粛々と行われた。それでも名前を呼ばれ、「はい」と大きな声で返事をする娘を見て、ちょっとうるっときた。誠に娘に甘い馬鹿父なのである。

巣立っていく女子高生たちを見てあらためて思うのは、未来である。

娘も含めみんな幸福になってほしいと思うが、『幸福の「資本」論』(橘玲著・ダイヤモンド社)が指摘しているように「ひとは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない」のである。

同書は「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本=資産から、「幸福に生きるための土台」の設計を提案している本だが、そういうことは学校では誰も教えてくれない。

多くが社会に出てから、それも失敗したり年をとってから気づくのである。「人生100年時代。未来へ踏み出す、あなたのとなりに」とかいって、老後の備えや資産運用の必要性を説く保険会社や金融機関のCMがあるが、それらはただカモを探しているだけ。結局、自分で自覚して学んでいくしかない。 

タイトルに惹かれて同じ著者の『臆病者のための株入門』(文春新書)も読んでみた。2006年刊の本なのですでに古い部分もあるが、ライブドア事件の経緯なども振り返られていて、初心者には勉強になった。

ほんの十数年前の証券市場に巨大な歪みがあって、それを利用すれば労せずして莫大な富を手に入れることができたなんて。

企業合併を利用して投資事業組合に自社株を預け、株式分割の発表で株価が値上がりしたら高値で売り抜けて、その儲けを自分の会社に環流させていた。それがホリエモン錬金術だったのだという。

そういうことをあらためて確認すると、コロナ禍で昨今投資ブームが来ているが、株は本当はこわい世界で、その深い闇を覗いた人は真のギャンブラーということになるのだろうか。

とはいえ、「絶対儲かる方法」などないのだから、投機でなく投資をする凡人の行き着くところは、バフェット流の「個別株長期投資」と、経済学的にもっとも正しい投資法である「インデックスファンド」という結論になるのだろう。

つまり、投資系YouTuberやFIREを目指している人の多くが実践していることは、誠にもっともなことで、それが投資の王道。まわりまわって、そのことを再確認した。

ただ、40代、50代と生きていくと、自分のまわりにいるだれかがぽつり、ぽつりと死んでいく。人の命は有限で、設計通りに人生は進まないかもしれない。

だからこそ、幸せは、なにかを成し遂げたときだけ感じるものではなく、現在進行形で目指している今、感じるべきものではないか。

『幸福の「資本」論』のエピローグもこう終わっている。

≪幸福な人生を目指して頑張っているときが、もっとも「幸福」なのかもしれません。≫

ひとは人生のはかなさといつも同居している。

臆病者はそう思うのである。

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君に幸あれ



 

〇〇の時代~個の力で勝ち組に~

恐ろしいことにわれわれは今、歴史の転換期にいる。

占星学的には、物質文明の「地」の時代から、精神文明の「風」の時代への転換期にあるという。これらの転換はおよそ200年周期で動くというから驚きだ。

産業革命から始まった物質文明が終焉を迎え、目には見えないスピリチュアル重視の時代に入る。社会は組織より、それぞれの多様な個性の力が試される時代になるのかもしれない。

干支でいえば今年は「辛丑」(かのと・うし)。辛い痛みを伴いながら、新しい種から芽が出始める年だという。干支は60年で一回り。

たしかに60年前を考えてみよう。1961(昭和36)年だ。

日本は高度成長期に入り、世界では①米ケネディ大統領の誕生②人類、宇宙へ(ガガーリンによる初の有人宇宙飛行)③「ベルリンの壁」出現―が起こった。

今年は、再び冷戦時のように世界が二極化するとともに、ニューリーダーが誕生するのかもしれない。

思えばコロナ禍が世界をおおった昨年は「庚子」(かのえ・ね)だった。

庚子は、中国では大乱などが起こる災禍の年というジンクスがあったが、コロナ禍が見事にそれを実証してしまった。

庚子の年、古くは220年には魏の曹操が死に、後漢がほろんだ。近代では1840年アヘン戦争が起こり、中国は列強の植民地と化した。今回、その災禍は世界に広がってしまった。

一方で、庚子は新たな息吹と繁栄の始まりの年ともいわれる。古い社会の仕組みや在り方が解体され、より可能性に満ちた社会の実現へと向かい出したとも捉えることができる。

そう前向きにとらえれば、スピリチュアルな「風」の時代の到来も、新しいことに挑戦し、変化に対応できる人が「勝ち組」になれる時代ということかもしれない。

大量生産・大量消費時代が終わりを告げ、多様な個性、価値観が社会の可能性を広げるようになる。おそらく後世には「〇〇の時代」という特定の名前が冠せられ、歴史に転換期として位置づけられるのだろう。

そう信じて新しい時代を切り開いていこう。

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人間の欲望に依存する資本主義はどうなる?

 

学習塾の未来

想定外のコロナ禍により、どの業界も変化への対応力の差で企業業績に明暗が分かれ始めている。少子化での長期戦略が必須の学習塾業界の場合、コロナを教訓にして、どのようなビジョンを描くのか。極私的に投資対象としての学習塾の将来性を考えたい。

矢野経済研究所による教育産業市場に関する調査結果(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2584)によると、2019年度の教育産業全体(主要15分野計)の市場規模は前年度比0.3%増の2兆7747億円となった。年度末に新型コロナウイルス感染症の拡大で多くの業界・企業がマイナスの影響を受けたが、主要15分野のうち「幼児向け通信教育市場」「学生向け通信教育市場」「幼児向け英会話教材市場」「資格取得学校市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」の6分野の市場は拡大したという。

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矢野経済研究所のリリースより

20年度の教育産業全体の市場規模は、前年度比2.8%減の2兆6,978億円を予測する。「学習塾・予備校市場」も、学校の休校要請に伴う減収、生徒募集活動の抑制による新規入塾生の伸び悩みなどのマイナスの影響が受けた。通塾再開後は回復基調も、休塾・休講による減収分をカバーしきれない事業者も多いとして、同市場も前年度割れを予測している。

市場全体の今後について、同社は「M&Aや業務提携などによって、サービス・事業領域の拡大、事業エリア(地域)の拡大、対象年齢の拡大、新サービスの開発等を進め、ターゲット層の拡大、さらには顧客サービス提供期間の長期化を図ることで、事業・経営の安定ならびに事業成長を目指す動きが顕著になっていく見通しである。なお、コロナ禍が契機となり、多くの教育サービスにおいてオンライン化が進み、利用者の選択肢が増えることとなり、サービス提供の多様化が進展していく見込みである」と分析している。

限られた市場のパイをめぐって、大手学習塾では近年、顧客層や事業セグメントの拡大を狙ったM&Aも目立っている。また、映像授業は大学受験の高校生だけでなく、小・中学生でも拡大傾向にあったが、コロナ禍によって、今やこうしたデジタル化への対応は必須になりつつある。

さらに20年度からは、大学入試センター試験が「大学入試共通テスト」に変わった。学習指導要領も改訂され、小学校ではプログラミング教育や英語が必修化された。こうした新システムに沿った学習メソッドを持たない学習塾は今後、生き残りが難しくなると予想され、さらなる再編が進む可能性もある。

●デジタル化への対応迫られる教育現場

デジタル対応の需要増の背景には、コロナ禍を踏まえた学校教育のデジタル化推進施策の前倒しがある。文部科学省は、通信環境を整備することで個別最適化された次世代の教育を目指す「GIGAスクール構想」を前倒しで実施。小中学生に1人1台、パソコンやタブレット端末を配備し、個別最適化な教育を行うという。必要に応じて学習者用デジタル教科書も併用する。子供はともかく、教師がこの性急なデジタル化の拡大に対応できるのか心配だが、それで失敗したら、文科省はおそらく現場のせいにするだろう。

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文科省リーフレット

それはともかく、学習塾業界もコロナ禍を踏まえ、リアルな集団授業中心から、オンライン授業などのe-ラーニングや個別指導などを併用した方向にさらにシフト。上位企業は競合他社に先んじてこうした対応を強化し、顧客を取り込もうとするだろう。

以上のような動向と見通しを踏まえた上で、投資対象として学習塾業界の将来性はどうか。株初心者なので諸先輩方のご意見を伺いたいところだが、あくまで参考として、来期以降の成長を見込んで買った銘柄を紹介する。

●東京個別、再び成長へ

個別指導塾のパイオニア東京個別指導学院証券コード4745)は、高配当と株主優待が魅力。2007年にベネッセコーポレーション(現ベネッセホールディングス)と資本業務提携契約を締結し、連結子会社となっている。小中高生を対象とする個別指導塾をすべて直営で261教室展開(21年2月期第3四半期決算資料による)。企業向け研修の経験・ノウハウを持つHRBCとの協働で「企業向け人財開発」という新たな領域にも進出し、事業の複線化も推進。20年2月期までは8期連続の増収増益を達成している。

昨年は緊急事態宣言などにより、4月中旬から全教室の臨時休校措置を取ったが、宣言解除後は地域ごとに順次授業を再開し、6月には全教室が開校。コロナ対策を徹底し、新サービスとして、生徒が自宅にいながら個別指導授業を受講できるオンライン個別指導サービスも提供している。

昨年10月に発表した新中期経営計画「ホスピタリティ経営2023」(22年2月期~24年2月期)では、成長戦略として「講師人財プラットフォームの進化」および「ICT 活用による教育サービスの進化」を推進。具体的な数値目標も提示し、再び拡大路線を掲げる。配当性向50%以上を維持するとしており、事業複線化による成長性も加味すれば、今後も投資対象として魅力を感じる。

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東京個別指導学院の決算資料より

●城南、反転上昇を期待

城南進学研究社(同4720)は、 講師とAI併用の個別指導塾「城南予備校DUO」や映像授業塾などを展開する。21年3月期はコロナ禍で大幅な赤字の見通しだが、集団授業撤退などで固定費を大幅に削減。早くからオンライン化への対応を進めてきたことで、コロナを機に反転上昇の可能性が高いとみる。

教育ソリューション事業では、同社のWEB学習システム「デキタス」が多くの学校・自治体・学習塾などで導入が進んでいる。経済産業省が実施する「EdTech導入補助金」の活用導入を希望する実証自治体・学校教育機関の募集も行い、デキタスの導入を決定した学校で先端的教育ソフトウエア導入実証事業が始まっている。

現行の中期経営計画では、あらゆるサービスのオンライン化を進めており、基本戦略の一つである「収益構造改革の断行」などの成果も上がれば、来期以降は事業拡大への期待が高まる。「GIGAスクール構想」の前倒しで、デキタスの需要拡大という追い風もあるので、21年3月期の配当は1株5円の減配(前期10円)を見込んでいるが、来期は10円への回復を信じたい。

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城南進学研究社の決算資料より
●自己責任で「宝探し」

学習塾業界について、極私的に反転上昇すると見込んだ2銘柄を紹介したが、もちろん、ほかにも今後の成長が期待できる銘柄は存在するはずだ。ただし、コロナ禍での業績悪化で優待を改悪した明光ネットワークジャパン(同4668)のように、どの銘柄も減配や優待改悪・廃止の可能性は否定できない。現にYouTuberのわっけさんが、城南進学研究社を優待廃止リスクが高い銘柄として最近紹介されていた。ただ、私のような素人には、そのあたりのところを予想できる力もないので、今回はあくまで座興として紹介してみたまでである。

このほか、「GIGAスクール構想」需要関連の銘柄として、リソー教育(同4714)も気になっていたのだが、もうある程度株価が上昇してしまった。

いずれにしろ、どれに投資するか、結局選ぶのは自分。いろんな方々の意見も参考にしつつ、自己責任で自分なりに銘柄探しを続けるしかない。

目を養えば、確実に「宝探し」につながる。そう信じて…。

株初心者の方、お互いがんばりましょう。

 

なぜ僕らは働くのか

なぜ僕らは働くのか。

この問いに明快に答えられる大人はどれだけいるだろうか。もちろん仕事は「生活や家族のため」という側面が大きいが、仕事は単にお金を稼ぐ手段としてだけでなく、その人の人生の大きな部分を占める。生き方そのものにも直結する。そして、誰もが「自分らしく働き、幸せに生きられること」を願っているはずだ。

だが、昭和の高度成長期のように、1つの会社に入って、まじめにコツコツ定年まで働けば老後もそれなりに豊かに生きていけたのは昔の話。今は「公助」より「自助」が優先され、サラリーだけでは生活さえ心許ない。年功序列の終身雇用制も崩れつつあり、ますます経済格差が拡大する時代だ。

過労死やブラック企業が表面化したからか、いまさら「働き方改革」なんてのも始まっているが、本当に被雇用者のための改革になるとは思えない。これからは、早くから収入の柱をいくつか確立して人生設計していかなければ、おそらく悲惨な老後が待っているだろう。

そういう社会の暗部を大人は子どもに伝えていく必要はあるが、それはそれとして、未来のある子どもたちには、夢や希望を持って自分がどう働くかを真剣に考えてほしい。昨年発刊された『なぜ僕らは働くのか』(監修:池上彰、学研)は、そういう強い思いを込めて中高生向けにつくられた真摯な本だ(本の公式特設サイト:https://gakken-ep.jp/extra/nazehatarakunoka2020/)。

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書店のPOP

さすが解説のうまい池上さんが監修されているだけあって、筋道を立てて、働くということはどういうことか、さまざまな視点から教えてくれる。漫画を使ったストーリー仕立てになっており、実際に将来に悩む中学生の主人公が、本に書かれている内容を同時並行で学びつつ、前向きになっていくという構成になっている。

章立てをざっと紹介すると「仕事ってなんだ?」「どうやって働く? どうやって生きる?」「好きを仕事に? 仕事を好きに?」「幸せに働くってどういうこと?」―など。わかりやすいタイトルで、冒頭では、この社会がいろんな仕事にお互い支えられて成り立っていることにまず気付かされる。

そして仕事とお金、生活、それぞれの関わりを丁寧に教えてくれる。さらに、ワークライフバランス、AI、多様性(ダイバーシティ)など、現代特有の重要なテーマにも言及。働くうえで考えるべき様々なテーマを取り上げている点で、これから社会に出る若者だけでなく、大人にも、なんらかの示唆を与えてくれる本だと感じた。

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公式『なぜ僕らは働くのか』特設サイトより

もちろんキャリアプランを立てたとしても、その通りに人生はいかない。人生100年時代も見据え、人生のいろんなステージに合わせて、キャリアを見直していく必要性も指摘している。そして最後に「なぜ僕らは働くのか」、この答えに正解はないこと、100人いれば100通りの答えがあるとし、「人生に正解はない。いろいろやってみよう」と呼び掛ける。

●「予期せぬ偶然」をつかみ取る!

本で紹介されている中で個人的に注目したのは、「仕事がうまくいく人の行動の特長」という話の中で紹介されている「計画された偶然性理論」という考え方だ。これは20世紀末、米国のスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授の考えで、「個人のキャリアの8割は予期せぬ偶然で決まる」というもの。本ではこれを「良い生き方・働き方ができる人は、いい偶然を自分の力でつかめる」ということだと要約している。

そのために必要な行動の要素は①好奇心②持続性③柔軟性④楽観性⑤冒険心―。この5つの要素を意識して行動している人は仕事がうまくいくという。

前向きに挑戦していれば、いい偶然が起こり、仕事がうまくいく。それを人は「自分は運が良かった」と言ったりするが、その運命はもしかしたら自分が引き寄せたのかもしれない。しあわせは「仕合わせ」とも書く。その人にとって不思議な運命、めぐり合わせは、その人の努力によって生まれた偶然かもしれない。その僥倖を、人は「仕合わせ」=「幸せ」と呼ぶ。

そう思うと、これから出会える偶然にわくわくする。頑張っていれば、もしかしたら予期せぬ偶然をつかみ取れるかもしれない。

あなたも、わたしも。

Good luck!