まほろば紀行~つれづれなるままにレトロに生きる

日々の雑感や昭和レトロ、素人の投資ことはじめを語ります

学習塾の未来

想定外のコロナ禍により、どの業界も変化への対応力の差で企業業績に明暗が分かれ始めている。少子化での長期戦略が必須の学習塾業界の場合、コロナを教訓にして、どのようなビジョンを描くのか。極私的に投資対象としての学習塾の将来性を考えたい。

矢野経済研究所による教育産業市場に関する調査結果(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2584)によると、2019年度の教育産業全体(主要15分野計)の市場規模は前年度比0.3%増の2兆7747億円となった。年度末に新型コロナウイルス感染症の拡大で多くの業界・企業がマイナスの影響を受けたが、主要15分野のうち「幼児向け通信教育市場」「学生向け通信教育市場」「幼児向け英会話教材市場」「資格取得学校市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」の6分野の市場は拡大したという。

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矢野経済研究所のリリースより

20年度の教育産業全体の市場規模は、前年度比2.8%減の2兆6,978億円を予測する。「学習塾・予備校市場」も、学校の休校要請に伴う減収、生徒募集活動の抑制による新規入塾生の伸び悩みなどのマイナスの影響が受けた。通塾再開後は回復基調も、休塾・休講による減収分をカバーしきれない事業者も多いとして、同市場も前年度割れを予測している。

市場全体の今後について、同社は「M&Aや業務提携などによって、サービス・事業領域の拡大、事業エリア(地域)の拡大、対象年齢の拡大、新サービスの開発等を進め、ターゲット層の拡大、さらには顧客サービス提供期間の長期化を図ることで、事業・経営の安定ならびに事業成長を目指す動きが顕著になっていく見通しである。なお、コロナ禍が契機となり、多くの教育サービスにおいてオンライン化が進み、利用者の選択肢が増えることとなり、サービス提供の多様化が進展していく見込みである」と分析している。

限られた市場のパイをめぐって、大手学習塾では近年、顧客層や事業セグメントの拡大を狙ったM&Aも目立っている。また、映像授業は大学受験の高校生だけでなく、小・中学生でも拡大傾向にあったが、コロナ禍によって、今やこうしたデジタル化への対応は必須になりつつある。

さらに20年度からは、大学入試センター試験が「大学入試共通テスト」に変わった。学習指導要領も改訂され、小学校ではプログラミング教育や英語が必修化された。こうした新システムに沿った学習メソッドを持たない学習塾は今後、生き残りが難しくなると予想され、さらなる再編が進む可能性もある。

●デジタル化への対応迫られる教育現場

デジタル対応の需要増の背景には、コロナ禍を踏まえた学校教育のデジタル化推進施策の前倒しがある。文部科学省は、通信環境を整備することで個別最適化された次世代の教育を目指す「GIGAスクール構想」を前倒しで実施。小中学生に1人1台、パソコンやタブレット端末を配備し、個別最適化な教育を行うという。必要に応じて学習者用デジタル教科書も併用する。子供はともかく、教師がこの性急なデジタル化の拡大に対応できるのか心配だが、それで失敗したら、文科省はおそらく現場のせいにするだろう。

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文科省リーフレット

それはともかく、学習塾業界もコロナ禍を踏まえ、リアルな集団授業中心から、オンライン授業などのe-ラーニングや個別指導などを併用した方向にさらにシフト。上位企業は競合他社に先んじてこうした対応を強化し、顧客を取り込もうとするだろう。

以上のような動向と見通しを踏まえた上で、投資対象として学習塾業界の将来性はどうか。株初心者なので諸先輩方のご意見を伺いたいところだが、あくまで参考として、来期以降の成長を見込んで買った銘柄を紹介する。

●東京個別、再び成長へ

個別指導塾のパイオニア東京個別指導学院証券コード4745)は、高配当と株主優待が魅力。2007年にベネッセコーポレーション(現ベネッセホールディングス)と資本業務提携契約を締結し、連結子会社となっている。小中高生を対象とする個別指導塾をすべて直営で261教室展開(21年2月期第3四半期決算資料による)。企業向け研修の経験・ノウハウを持つHRBCとの協働で「企業向け人財開発」という新たな領域にも進出し、事業の複線化も推進。20年2月期までは8期連続の増収増益を達成している。

昨年は緊急事態宣言などにより、4月中旬から全教室の臨時休校措置を取ったが、宣言解除後は地域ごとに順次授業を再開し、6月には全教室が開校。コロナ対策を徹底し、新サービスとして、生徒が自宅にいながら個別指導授業を受講できるオンライン個別指導サービスも提供している。

昨年10月に発表した新中期経営計画「ホスピタリティ経営2023」(22年2月期~24年2月期)では、成長戦略として「講師人財プラットフォームの進化」および「ICT 活用による教育サービスの進化」を推進。具体的な数値目標も提示し、再び拡大路線を掲げる。配当性向50%以上を維持するとしており、事業複線化による成長性も加味すれば、今後も投資対象として魅力を感じる。

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東京個別指導学院の決算資料より

●城南、反転上昇を期待

城南進学研究社(同4720)は、 講師とAI併用の個別指導塾「城南予備校DUO」や映像授業塾などを展開する。21年3月期はコロナ禍で大幅な赤字の見通しだが、集団授業撤退などで固定費を大幅に削減。早くからオンライン化への対応を進めてきたことで、コロナを機に反転上昇の可能性が高いとみる。

教育ソリューション事業では、同社のWEB学習システム「デキタス」が多くの学校・自治体・学習塾などで導入が進んでいる。経済産業省が実施する「EdTech導入補助金」の活用導入を希望する実証自治体・学校教育機関の募集も行い、デキタスの導入を決定した学校で先端的教育ソフトウエア導入実証事業が始まっている。

現行の中期経営計画では、あらゆるサービスのオンライン化を進めており、基本戦略の一つである「収益構造改革の断行」などの成果も上がれば、来期以降は事業拡大への期待が高まる。「GIGAスクール構想」の前倒しで、デキタスの需要拡大という追い風もあるので、21年3月期の配当は1株5円の減配(前期10円)を見込んでいるが、来期は10円への回復を信じたい。

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城南進学研究社の決算資料より
●自己責任で「宝探し」

学習塾業界について、極私的に反転上昇すると見込んだ2銘柄を紹介したが、もちろん、ほかにも今後の成長が期待できる銘柄は存在するはずだ。ただし、コロナ禍での業績悪化で優待を改悪した明光ネットワークジャパン(同4668)のように、どの銘柄も減配や優待改悪・廃止の可能性は否定できない。現にYouTuberのわっけさんが、城南進学研究社を優待廃止リスクが高い銘柄として最近紹介されていた。ただ、私のような素人には、そのあたりのところを予想できる力もないので、今回はあくまで座興として紹介してみたまでである。

このほか、「GIGAスクール構想」需要関連の銘柄として、リソー教育(同4714)も気になっていたのだが、もうある程度株価が上昇してしまった。

いずれにしろ、どれに投資するか、結局選ぶのは自分。いろんな方々の意見も参考にしつつ、自己責任で自分なりに銘柄探しを続けるしかない。

目を養えば、確実に「宝探し」につながる。そう信じて…。

株初心者の方、お互いがんばりましょう。