まほろば紀行~つれづれなるままにレトロに生きる

日々の雑感や昭和レトロ、素人の投資ことはじめを語ります

「光と影」に魅せられて

「光の画家」とも言われるフェルメールの絵画展を観てきた。

以前にも「天文学者」などの作品が観たくて、美術館に足を運んだことがあるが、やはり、たまには本物を観ないと、ネットや本だとサイズ感が分からない。色の濃淡や明暗の印象も、実際とは違う気がする。

観たかったのは目玉の「窓辺で手紙を読む女」。

絵の中には、修復後にあらわれたキューピットの画中画を含め、いろんな画家の暗喩が隠されているのだろうが、そういうのは専門家にまかせるとして、ただただ印象的なのは、オランダ絵画の黄金期を代表するレンブラントと同様、「光と影」のコントラストだろうか。

現代では、風車とチューリップで有名なヨーロッパの小国というイメージしかないが、17世紀当時、オランダは商業・金融・海運で世界の覇権を握っていた。

「物事を組織的にやるという、こんにちの巨大ビジネスのやり方をあみだしたのは十七世紀のオランダであり、十八世紀はじめの英国は、それをいわばまねたにすぎないとさえいえそうである。」
『オランダ紀行』(司馬遼太郎著)より

その絶頂期にあるオランダ絵画が描くのは、英雄や戦争ではなく、市民のなにげない日常生活やありふれた風景なのである。

「デルフトの眺望」もそんな作品の一つだ。

とはいえ活発な経済活動は、民衆をも巻き込んで投機心をあおり、あの有名な「チューリップ・バブル」を招いた。

最終的に大暴落し、多くの破産者を出したという17世紀のこの大騒動。

「見栄を張らない」「地味」「勘定高い」などの気質があると言われるオランダ人でさえこうなのだから、いったん高まった投機熱というのは狂うところまでいってしまうのかもしれない。

スペインから独立して黄金時代を迎えた17世紀のオランダだが、独立戦争は長期化し、現実には平和が訪れる機会は少なかった。市民の生活も決して平穏のままではなかったはずだ。

フェルメールの絵に惹かれるのは、そうした現身の光と影を感じるからかもしれない。

幸福な一瞬に潜む闇。

現代に話を戻すと、なんか、わけのわからないことになってきた今の株式相場。まだまだ投機熱がこもっているが、そのうちぽっかりと闇に出くわさないか―。

なにごとも悲観的な素人は、しばらく傍観しておくことにする。