まほろば紀行~つれづれなるままにレトロに生きる

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『黄金の日日』がおもしろい ~「内向き」じゃなかった日本人~

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先月、女優の李麗仙さんが亡くなられた。

ちょうど今年は、出演されていた大河ドラマ黄金の日日』(https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=taiga016)が 再放送中なので、当時の記憶と相まって、またひとつ昭和が遠ざかったな―との思いが強い。

ドラマの放映は1978年(昭和53年)。自治都市・堺と呂宋(現フィリピン)の交易を開いた商人・呂宋助左衛門(納屋助助左衛門)の物語なのだが、主要キャストの丹波哲郎鶴田浩二、緒方拳、津川雅彦児玉清根津甚八、川谷拓三などの方々はもうこの世にいない。

昭和の名優の演技は凄味があって、いま見てもおもしろいのだが、登場人物が型破りなのは、時代背景が南蛮貿易盛んな戦国時代末期、舞台が自由で活気に満ちた自治都市・堺だからでもある。

当時は密貿易による東アジアのネットワークがあり、鉄砲伝来も、当のポルトガル人は中国の密貿易船に乗って種子島に漂着したのだという。

「環シナ海の中国・日本・朝鮮・琉球・アンナン(ベトナム)などの人びとが、国の枠をこえて広く中継貿易をおこなっていた。ヨーロッパ人は世界貿易の一環として、この中継貿易に参入してきたのである」(『詳説日本史』山川出版社、2019年発行)ということらしい。

おそらく呂宋助左衛門のように、海外に乗り出す日本人がたくさんいたのだろう。貨幣経済に目覚めた当時の日本人、全然「内向き志向」じゃなかったのである。

中継貿易で日本が重要な役割を果たしたのは、銀の産出量が爆発的に増加したことも大きく、需要が高まっていた中国に大量に輸出されたようだ。

まるで符号のように、今年の大河ドラマ『青天を衝け』も商人(実業家)が主人公。『黄金の日日』同様、主人公が商品経済を分かっているため、観念ではなく現実を直視するから行動が明快。逆境にあってもめげず、時代を切り拓いていく姿がかっこいいのだ。

翻って、経済低迷が続く日本。国際競争力は低下する一方で、「人口減少」の上に「内向き志向」の人が多いとすれば、そのうち東南アジア諸国にも追い抜かれるかもしれない。

そして栄光の再来を夢見た東京オリ・パラは、結局、無観客となり、莫大な経済損失だけが「レガシー」となりそうな気配。嗚呼、まさに「丑つまづき」である。

相場格言は関係ないだろと言われそうだが、蓋然性が高いから格言になっているはず。とすれば、「丑つまづき、寅はねる」と、早くも来年の寅年に期待してみたくなる。

話は戻って、今回紹介した大河ドラマ黄金の日日』は本当におもしろいから、おすすめ。善住坊(川谷拓三)や五右衛門(根津甚八)の刑死など、涙なしには見られないシーンもある。今から見ても間に合うよ。

私は李麗仙さんの「楽におなり」というセリフが忘れられない。

理由は、見ればわかるはず。